30回 春のインターウニ・ゼミナール(2011.3.11~13)の記録

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2011年春のインターウニ・ゼミナールは、1981年の第1回から数えて記念すべき第30回のゼミナールとして、創設当時からのゲストをお呼びして盛大に開催される予定でした。

3月11日、2台のバスで会場に到着して開会を待ち受けていた120名余りの参加者を待っていたのは、しかし、東日本大震災のとてつもなく長く大きな、どんどん強くなってゆく揺れでした。ゼミが始まる前に、あちこちの部屋で机が倒れ、コピー機が落下しました。

まだ現地に到着したばかりの参加者たちは、主催者や責任者の顔と名前も一致していない段階で、知り合いも少なく、まだ何がどこにあるのかも分からない建物の中でしたから、さぞかし不安が大きかったことと思います。それだけに、誰ひとりパニックも起こさず、互いに助け合って支え合ってくださった参加者の方々には心から感謝するしかありません。大声を出したり外に飛び出したりする人は誰もいませんでした。

第30回インターウニ・ゼミナールはこうして、始まる前から危機管理と安全帰宅だけを考えるゼミとなりました。幸い建物は無傷で、電気・水道・暖房などのライフラインも損傷ありませんでした。差し迫った危険は見当たらず、テレビで実況中継される大津波も山の中までは来ないと判断できたので、さしあたり避難する必要はないだろう、むしろ建物に残って様子を見る方が安全であろうと思われました。新幹線や高速道が寸断されて交通機関が完全に麻痺していたので、実行委員会としては3月11日段階では、とりあえずこの建物に残ってゼミを続行する判断を下しました。大きな余震がたえまなく続く中、厨房で働いていた人の中には恐怖で倒れてしまうほど危険で調理はできませんでしたが、それでも管理人の寺内さんたちはレトルト食品を取り混ぜるなどして温かい食事を提供してくださいました。3月11日の夜には、多くの人が心ここにあらずであったに違いありませんが、私たちは予定のゼミ・プログラムを少しずつ開始し、テーマである日独交流史についての講演や議論を行いました。絶え間なく余震の続く不安な夜は、各地の被害状況をテレビ番組が伝え続けており、仙台や気仙沼出身の参加者にとっては家族の安否も分からない一夜でした。携帯電話もなかなか通じない状況の中で、参加者の家族の方々も心配していたに違いありません。幸いセミナーハウスの電話回線はまだかろうじてつながっていたので、参加者家族向けに現状をホームページにアップロードして発信しました。(当時リアルタイムでアップロードしたホームページはこちらに保存してあります。)

翌3月12日も余震は収まりませんでしたが、それだけであれば私たちは、交通混乱が収まるまで予定通りセミナーハウスにとどまったことでしょう。決定的だったのは福島第1原発の状況でした。同じ福島県内ということで原発事故を心配するご家族からのメールが実行委員会宛に寄せられ始めた12日の昼前には、電話もネットもつながらなくなってしまいました。ゼミでは予定のプログラムに従ってGruppenarbeitを続けましたが、実行委員会はゼミの打ち切りを決断し、かろうじてつながる携帯回線を使って密かに東京行きのバスを探しました。夕方になって、被災地に近い郡山市の福島交通に、大型バスが2台確保できたのは、私たちにとって奇跡的な朗報でした。翌13日午前に都内行きのバスで全員帰ることになったとのアナウンスを12日夕食時にしたときには、安堵の声があがりました。

このような状況の中で、集まった参加者の方々は連帯感を強め、お互いに支え合い、助け合ってくれました。とりわけ東北出身の方々にとってはつらく不安な日々でした。仙台方面への交通手段は途絶えていて帰宅はできませんでした。知り合いのいない都内にいったん待避せざるを得なかった彼らのために宿舎の手配をしてくれたのは、ドイツ人留学生でした。13日朝、バス2台は苦労の末に給油をすませて、参加者を迎えに来てくれました。セミナーハウスの管理人寺内さんたちは八方手を尽くして、120人分の弁当を用意してくださいました。心配したほどの大渋滞もなく、バスは一般道を通ってその日の夕方には予定していた大宮駅に着きました。都内での計画停電が始まりJRの運行が滞るようになったのはその翌日からのことでした。その後数日で、参加者全員が無事帰宅できたことを、メール連絡により確認することができました。

東日本のどこにいてもショッキングな大地震でしたが、インターウニのような大きな合宿ではなおさらのことと思います。にもかかわらず参加した皆さんの協力と連帯と良識のお陰で、全員無事帰りつくことができました。インターウニのゼミとしては残念ながら真価を発揮することはできませんでしたが、それだけ一層、強烈な印象を残し、多くを学ぶこととなったゼミでした。にもかかわらず多くの参加者の方々が、地震にも増してインターウニでドイツ語漬けの世界に大きな魅力やショックを感じ、貴重な機会が予定の半分しか実現できなかったことを惜しんで今後のさらなるゼミの機会を求めてくださっていることに、勇気づけられる思いがします。

参加した皆さんの一丸となった善意と協力に感謝します。そしてとりわけ管理人の寺内さんに心よりお礼申しあげます。

               第30回春のインターウニ・ゼミナール実行委員会

関連サイト
・ 参加者の皆さんから寄せられた感想文

・ ドイツ人Praktikantによる感想文

・ DAAD友の会『ECHO』に掲載された報告(浜崎桂子)

・ 地震発生当時にリアルタイムでアップロードしたホームページ

 
 
  支えてくれたチューターとドイツ人Praktikantの皆さん